NO WASTE

論理的に、そして感情的に。

『黒澤ダイヤに翼はいらない』反省文

この記事は拙作『黒澤ダイヤに翼はいらない』を振り返り、反省(主に悪い点)を列挙した内容となっています。

ネタバレがあるので、あらかじめご了承ください。

 

 

さて、大まかに以下の流れで書きます。
 
①ストーリー展開の反省点
②文章の反省点
③キャラクターの反省点
④世界観の反省点
⑤雑感
 
ざっくり分けただけなので枝葉の部分で違う話にもなるかと思います。
その辺りはご容赦願います。
 
 

①ストーリー展開の反省点

「順風満帆だけど満たされない人生」と「ぎりぎりだけど熱い人生」の対比が甘い

言ってしまうとこれがダイヤさんの生き様を表す上で非常に重要な対比だったんですが、ここもっと強調したかったなあ、と。
自由に生きることの空虚さを強調するにはある程度の時間経過が必要だと思ったんですが、あまりあの世界で長い時間(例えば1年とか)過ごさせてしまうと、状況打破のきっかけの発生が不自然になるような気がしてしまって。
まあそっちはまだいいにしても、問題は後者ですね。
ダイヤさんが「ぎりぎりだけど熱い人生のほうが楽しい」と気づくために、もっと良いイベントを用意できた気がしています。
ライブ直前にとんでもない困難が立ちはだかりそれを仲間と一緒に乗り越えるとかそんな感じの。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒対比したいものを明確にしてからシーンを作り込む。

感動の押し付けになっている気がする

これは感覚的な話です。
そもそも感動ってなに?
エモいってどういうこと?
押し付けって感覚はどこからくるの?
僕には未だによくわかりません。
このダイヤの話はエモさの正体を理解するために書いたので、目標未達です。
いや、それこそ感覚的にはわかるんですが、明確な理論として説明できるまで落とし込みたい。
なぜかというと、システマティックにエモい話を書けるようになれたら最強だと信じているからです。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒感動する作品に出会ったら何度も読み返してその理由を分析する。

二次創作でテーマ性をもたせるのは限界があった

ストーリー展開とはあまり関係ないんですが、他に適切な区分もなかったのでここに入れました。
まあ、考えてみれば当たり前なんですよね。
世界観があってキャラクターがいるということは、彼らのテーマはもう決まっているんです。
意識的にせよ無意識的にせよ、先にテーマ(主張)があって、それを表現するために生まれるのがキャラクターですから。(必ずそうだというより、あるべき論ですけど)
で、他人の世界観やキャラクターをお借りして、自分のテーマを表現しようとするとどうなるか。
まあ、窮屈ですよ。
自分の抱えるテーマと共通性や親和性のあるポイントを見出して折衝していくという手続きは避けられません。どちらかを蔑ろにするなら別ですけどね。
原作を大事にしつつ、自分の表現したいテーマをどう織り込むか。これが二次創作の難しさだと感じました。
一次創作はその点、責任(というか負荷)は重くなりますが、自由です。
なんだか日本とアメリカみたいですね。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒テーマ先行で書くなら一次創作にする。
 

②文章の反省点

描写に具体性がない

そのままです。シンプルかつ最大の課題。
語彙と知識と想像力の欠如が原因ですね。
(ここでの想像力は、頭のなかで細部をイメージできる能力とします)
まあこれに満足する日は一生来ないんでしょうが、反省として挙げないわけにもいきません。
読書できない日でもせめて想像力くらいは鍛える習慣をつけないとだめですね。
ただ、何でもかんでも具体的にすればいいかといえばそうでもなくて、これもやっぱり場面とかテーマによって合わせるべきだと思います。
理想としては「いつでもいくらでも具体的に書ける」けど「使いどころを見極められる」です。
ただ、現時点での僕はひいひい言いながら具体性を出してる状態なので、まずは余裕をもって具体性のある描写ができる力をつけます。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒語彙:新しく出会った単語・表現はメモに残す。
⇒知識:なんとなくで書かない。未経験のことでもブログで体験談を探すなどする。
⇒想像力: 1日に1つ以上、何かを集中して観察する。

テンポが悪い

ここでいうテンポの悪さとは、「速すぎる」という意味です。
心理や情景の描写が弱いため、地の文が動作や情報ばかりになり、緊迫した場面での「間」を上手く演出できていません。
さくさく読めるといえば聞こえは良いですが、そのテンポでしか書けないというのは問題です。
特にミステリはテンポ良く読ませるべきところとそうでないところの両方が確実に登場する(状況整理はテンポ良く、犯人の摘発は焦らしつつ、みたいな話です)ので、間をコントロールするテクニックは身につけないといけない気がします。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒心理・情景描写の分量を意識的に増やして一本書く。

プロットを追うことだけに視点が偏り、物語全体が性急な印象になっている

テンポの悪さと似てるんですが、こちらはもう少しマクロな話です。
要は遊び(余白といってもいいかもしれません)が足りないんですよね。
ある読者の方に「ダイヤさんがフェルト人形に慣れるまでの時間が短いように感じた」というご指摘をいただいたんですが、その印象もここから来てしまったのだと思います。
僕は基本的に無駄が嫌いなので、つい「この場面(文章)は物語を成立させる上で本当に必要なのか?」と考えて要らないと思ったら躊躇なく削ってしまうんですが、この性格に引っ張られて遊びの部分まで削ってしまった気がしています。
例えばカラオケやラジオの件も、そのあとに待つ物語の落差を強調するために必要という意識だけで書いた結果、展開が速くなってしまいました。振り返ると、あの辺りはもう少し文章で遊んでいい部分だったかもしれません。
というか、そこに限らず全体的にぎりぎりまで切り詰めてしまった感じがあって、その結果、冷淡で性急な感じになってしまったかなあという反省です。
これは文章の話でもあり同時に展開の話でもありますね。
もっと遊び(レジャーという意味に限らず)のシーンを入れても良かったのかも。
まあそれで中弛みしたら本末転倒なんですけど…そのバランスも難しいですね。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒無駄だと思ってもすぐには削らずまずは書いてみる。
⇒展開が早いと思ったら思い切ってワンシーン追加してみる。

日常シーンを書くのがめちゃくちゃ苦手

反省というより気づきなんですが、これ、痛感しました。
カラオケとかラジオの部分、本当に書けなくて。
根暗だからですかね。友達も少ないし。
なんて自虐はさておき。
どうして何気ない日常を書くのが苦手なのか考えました。
結果、僕が小説を書く目的と合ってないからなんじゃないかと思い至りました。
日々の尊さとか、日常に潜む小さな幸せとか、そういうテーマがわからないわけではないんです。
ただ、僕は痛みや迷いを抱えて生きている人のために小説を書こうとしています。
僕自身含め、そういう人たち(そういう状態にある人たちといった方が正確ですね)って、他人の幸せを直視するのがつらいんですよ。
どうして自分はああじゃないんだろうって思っちゃうから。
そういった感覚が自分のなかにもあるから、恵まれて幸せな日常の描写を無意識に避けているんじゃないかな、と。
今回みたいにあからさまな急落の予兆として必要な場面じゃなかったらたぶん書けませんでした。
ですが、救いの局面を書くバリエーションを増やすために、伸ばす必要はあるかなと思っています。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒楽しい体験をしたら日記に残す。
⇒楽しそうにしている人も観察する。

シリアスさの表現を重い単語に頼ってしまっている

「断絶」や「生贄」という単語の重さを文章で支えられていないんですよね。
では、単語に頼らない描写をするときに何が必要なのかというと、情景描写や心理描写の能力なのかなと。
情景とはつまり五感を通して得る情報ですが、それらにある共通したイメージを付与することで重い(書きながら気づきましたが重いに限らずですね)表現を文章全体で支えられるのかなと考えています。
なぜなら情景描写がしっかりしていればそれだけ読者のなかにもシーンが疑似体験として落ちていき、それが単語の重さを支える地盤になるからです。たぶん。
逆に軽い表現を使いたいならあまり書き込み過ぎないほうがいいのかも。この辺りは実験しないとわかりませんね。
心理描写についてはシンプルで、同類の心境を色んな言葉で表現できるようになれるといいのかなと思います。
もちろん絶対の正解はないと思うので、情景描写・心理描写に拘りすぎず、試したり勉強したりするなかでアプローチを変えていこうと思います。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒まずは情景に意味を持たせて間接的に描写するよう心掛ける。

二次創作であることに甘えて描写を多々省いてしまっている

校舎の構造などもですが、特に人物の容姿ですね。
ダイヤさんに限らず、個々の容姿の描写は省くべきではありませんでした。
二次創作として読ませるだけなら構わないのですが、文章の訓練という側面もあったので、ある意味ではサボりです。

じゃあ今後はどうする?
⇒二次創作だろうが原作知らない人でも分かるくらい書き込む。
 
 
 

③キャラクターの反省点

ダイヤさんの人物像を深堀りしきれなかった

書き上げた当時は自分でも頑張ったとは思っていたんですが、振り返るともっともっと考えられたことがありました。
たとえば、ルビィちゃんのことを大事に想うようになった原体験とか、家からの抑圧を受け入れていくプロセスとか、生徒会長という役職との向き合い方とか。
詰め込み過ぎても処理できなくなるので実際に作中で描写するかは別にしても、考える余地と意味はあったはず。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒人物を深堀りする観点を整理して一覧化する。

ダイヤさんの身勝手さを断罪できてない

ダイヤさんには、生徒会長の立場を利用してスクールアイドル部の設立を拒否し続けた罪があります。
その報いを充分に与えられなかったように感じています。
とはいえ、第五章でさんざん苦しんでもらったので、それが一応の罰にはなっているような、いないような。
じゃあ償いは?と言われると、「どんな時でも真剣にアイドル活動に取り組むこと」であるとも捉えられるかもしれません。
ただ、スクールアイドルになれなかった子たちがそれを望んでいるのかは微妙です。
なれなかった子たちへの誠意を見せることが、ダイヤさんが罪を雪ぐのに必要なアクションだったようにも思います。
あの世界では難しいにせよ、元の世界に戻ってからそういうことさせるべきでしたね。
ただ、エピローグが長くなるのもあまりよろしくないような気がします。
読後感とトレードオフですかね。いや、実際はもっと上手いやり方があるんでしょうね。うーん、未熟。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒そのキャラを憎むキャラの視点に立ち、何をしたら許せるか考える。

後半、ダイヤさんに主体性がない

五章前半で落ち込んでから立ち直るまでの間にダイヤさんが自分の意志で起こした行動は、メンバーの前で自分の醜さを吐露することだけでした。
この行為によって仲間からの肯定を得て立ち直ったといえばそうなのですが、結局結論を他人に委ねたままなんですよね。
そうではなくて、自分の意志でポジティブな結果を掴みにいかせた方がよかった。
例えば、船に跳び移るときだけは自分の足で跳ぶなど。
どうして主体性を気にするかというと、そうでないと主人公にした意味が薄いな、と思うからです。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒主人公にはなるべく自分の意志で決断・行動させる。

ルビィちゃんの深堀りがまったくできていない

ダイヤさんはまだしもルビィちゃんはもう確実に足りてなくて。
どうして姉想いになったのか。
どうして自分を卑下してしまうのか。
事件を起こすに至ったきっかけは何だったのか。
彼女にとってダイヤさんの結論は幸せなのか。
などなど。
その辺りをうやむやにしても成立してしまう話にしてしまったのは、逃げですね。
主人公であるダイヤさんのことを考えるのに体力を使い果たした感じです。
前作で人物深堀りから逃げたのと同じ。まるで成長していない…。
ただ、考えられていたとしても作品のなかに落とし込んだかはわかりません。
あくまでもダイヤの話なので、ルビィの掘り下げまで手を伸ばしてしまうと主張がブレる可能性はありました。
ここで反省としているのは、考えることすらできなかったという点です。
ルビィのことを書かないにしても、深堀りした上で除外するという選択ができれば理想でした。
この件に限った話ではありませんが、考えた上で書かないのと考えずに書かないのでは些細なセリフや行動の説得力が変わってくると思います。
そういった細部にこそ神は宿るといいますし、決して手を抜いてはいい部分ではなかったはずです。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒複数人の心境を深く考えないと成立しない話を一本書く。
 

④世界観の反省

SFという自由度の高さに甘えた

SF(今更ですが僕はSukoshi Fushigiの意味で使ってました)を初めて書いてみて、なんでもできるなって思ったんですけど、それに甘えた部分もありました。
例えばルビィちゃんがその力を得てしまった理由だとか、ダイヤさんだけ記憶が残った理由とかですね。
あの辺りは完全に「SFだから」のご都合主義で済ませてしまったんですけど、しっかり考えていれば物語を豊かにするエピソードが生まれたかもしれません。
実際に考えたとしても使うかどうかはやはり別問題なんですけど、考える余地はあったなという感じです。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒細かい部分も誤魔化さないで済むように時間配分を考えて執筆する。

フェルト人形を活かしきれなかった

異世界(超常現象)であることを一発で表現するために、無関係な人間の容姿を変えるという手段を僕は選びました。
一応、ルビィの得意分野だからという意味でフェルト人形にしたので、まったく何も考えなかったわけではありません。
ただ、それ以上の意味を持たせられなかったのはもったいなかったかなあ、と。
人形に接することで起きるエピソードを織り込めていれば、もっと意味ある設定にできたかもしれません。
 
じゃあ今後はどうする?
⇒その設定を採用する意味を2つ以上は考える。
 

⑤雑感

……できてないところしかないのでは??????????
 
いやもう本当にできてないところばかりで書きながら気が滅入りました。
滅入りすぎてツイキャスで泣きながら喋り倒したなんてこともありました。
嘘です、泣いてはいません。盛りました。
 
 
ともかく、ツイキャスに限らず色んな場面でアドバイスやご指摘いただいた点は自分で気づいていなかったものばかりでしたので、本当にありがたかったです。
同時に励ましのお言葉もたくさんいただいて、なんとか立ち直ることができました。
本当にありがとうございました。
 
ここに書いた問題点を一気に解決するのはたぶん無理ですし、自分で気づけていない反省点や書こうとして忘れてる反省点も多々あるとは思うんですけど、そういうのも掬い取りつつ精進します。
 
以上!…といいたいところですが、 
具体的なアクションまで書かないと反省になりませんね。
 
というわけで宣言。
まずは弱点である心理・情景描写に注力した中編を一本書きます。
というか、書いています。
完成したらPixivで全部公開します。目標は五月末公開です。
 
人を選びそうですが、面白い話にします。ご期待ください。
 
 
最後に。
感想フォームをご用意しております。
 
選択式なので気軽に入力できます。匿名でお送りいただくことも可能です。
ご感想お待ちしております。
 
 
今更…とかはお気になさらず。作り手にとっては、いつ頂いても嬉しいものです。
そして、ここに放り込んでいただけるとログとして流れないので実は見返すときにすごく助かります。
もちろん悪い点のご指摘もウェルカムです。
よろしくお願いします。 

 

今回は以上です。